君の嘘を知らなくて(仮題)
「アヤメー?次移動教室だよ、行こう?」
「あっうん!」
胡桃に呼ばれて我に返る。
いつの間にホームルーム終わっていたんだろう?
1時間目は音楽。
あたしは机の中から音楽の教科書を取り出し、
待っていてくれる胡桃の横に並んで音楽室へ歩き始めた。
廊下を歩いている途中、前から男子生徒の軍団がやってくる。
同じクラスじゃないけど、顔は知っているぐらい、有名な人たちだ。
有名な理由は、その態度。
校則は破りまくり何度も停学を受ける常連だし、授業もサボっているから成績も悪い。
先生たちの悩みの種である、いわば不良生徒なのだ。
噂では喧嘩も出来るって聞いたし、関わりたくない相手。
あたしは胡桃の後ろに1列に並んだ。
無事不良男子と何事もなくすれ違い、ほっと息を吐くと。
「……ごめんなさい」
後ろからか細い女の子の声が聞こえた。
振り向くとクラスメイトで、滅多に自分から発言しない、大人しい女子が、不良集団と向かい合っていた。