君の嘘を知らなくて(仮題)
お父さんの部屋からは音が聞こえない。
きっともう寝た。
私はTシャツ姿のまま薄手のパーカーを羽織り、スマホだけを持ち家を出た。
「ごめんね呼んじゃって」
「ううん気にしないで!」
出来るだけ明るく振る舞う。
「ねぇ胡桃、聞いて良い?」
「どうしたの?」
「…胡桃、真幸さんと関係あるよね?」
アイツの名前がアヤメから出ると思ってなくて、私は一瞬戸惑う。
「……知ってるの?真幸ちゃんのこと」
「うん。…桜太の大事な人」
「どうして私が真幸ちゃんと関係あるって思ったの?」
「胡桃、以前あたしの名前、使ったよね?」
「…望月くんから聞いたんだ?」
「うん。
その時胡桃、言ったんだってね?
桜太と真幸さん、幸恵さんのこと、全て知ってるって」
桜太。
いつの間に下の名前で呼ぶようになったの?