君の嘘を知らなくて(仮題)







自然と廊下を歩く、あたしたちを含めた生徒の視線が、女子と集団に向かう。




「謝ったぐらいで済まされると思ってんのか?あ゛?」


「ごめんなさい……」



震えた声を絞るように出す女子。

明らかにお怒りムードの不良男子。

多分…ぶつかったとかそういう、ベタなことがあったんだと思う。




「ふざけんなよ?てめぇ」



1番中央に立っている、リーダー的存在の男子が、女子の下で結んでいる黒髪を引っ張る。

女子はもう涙目で、いつ泣き出しても可笑しくない。




「アヤメ……」




隣の胡桃が不安そうな声を出す。

あたしの性格を知っているから。

女子に意地悪する男子は許せないっていう性格を。



「胡桃、持ってて」



あたしは筆箱と教科書を胡桃に渡す。




「アヤメ、止めておいた方が良いよ…。
絶対アヤメじゃ敵わないって」


「だからと言って放っておけないよ」




あたしの筆箱と教科書を受け取った胡桃に頷き、

あたしは泣き出した女子の隣に並んだ。






< 20 / 248 >

この作品をシェア

pagetop