君の嘘を知らなくて(仮題)
「……アヤメ。
悪いことは言わない。
親友として言わせてもらう。
望月を好きになるのは、止めた方が良い」
「どうしてっ……」
「望月の心を占めているのは、アヤメじゃない。
今でも望月は、真幸が好きなんだよ」
辛い現実を突きつけているのはわかっているよ。
傷つけてばかりで、ごめんね。
「アヤメじゃ、真幸に勝てない」
認めたくないけど、アイツほど憎らしい半面素敵な人はいない。
望月桜太という彼氏がいながらも別の男と関係を持つのは、あり得ないけど。
望月は、間違いなく、真幸一筋で、彼女だけを愛していた。
「アヤメじゃ、真幸に勝てないよ」
好きになるのなら、ちゃんとアヤメを見てくれる人が良いでしょう?
別の…しかも死んだ女を今でも好きでいる望月の心に、アヤメは入れないんだよ。
「……違うもん。
桜太はそんなに過去を引きずるような人じゃないもん」
「……じゃあ、聞いてごらんよ。
今でも望月は真幸が好きなのか。
……聞けるものなら、聞いてみなよ」
アヤメは大きく頷いた。
ぽたり、と涙が一粒こぼれ落ちた気がしたけど。
…気のせいだと、忘れておいた。