君の嘘を知らなくて(仮題)
哀しみと寂しさと憎しみと 桜太side
パチリ、といつも通りに目を覚ます。
次第に目が覚める俺は、目覚まし時計なんていらなかった。
「おはよう桜太」
顔を洗いタオルで濡れた顔と前髪を拭いていると。
後ろから兄貴が現れた。
「……おはよう兄貴」
「今日、帰り遅いんだよね?」
「……ああ」
放課後、倉田胡桃と話す。
何があるかわからない。
何を考えているかわからないから。
「早めに帰っておいでね。
椿さん、ご飯作って待っているからね」
「……わかった」
真幸を失い、暫(しばら)く家に引きこもりがちだった俺を、両親と兄貴は何も言わずそっとしておいてくれていた。
その優しさには、凄く感謝している。
……だけど、
感謝し嬉しかった半面
その優しさが痛く感じたこともあった。