君の嘘を知らなくて(仮題)
寝間着姿から制服に着替えようと、リビングを通り2階へ向かおうとすると。
「おはよう桜太くん!」
朝なのにやけにテンションが高い椿さんが、にっこり笑った。
「……おはよう、椿さん」
「今日遅いんだって?」
「そう。
ごめんね昨日とかも色々迷惑かけたのに」
いなくなった俺を探し、アヤメが出ている間、椿さんと兄貴はずっと
夕食を食べないで待っていてくれた。
昨日も待たせたくせに、今日も待たせるとか。
「桜太くん」
「何?」
「色々と迷惑かけても良いのよ?
遠慮することなんてないわ」
「……」
昔から俺は人に迷惑をかけるのを遠ざけてきた。
迷惑は、かけて良いものだとは思っていなかったから。