君の嘘を知らなくて(仮題)







俺の心情を読み取ったのか、椿さんがフライパン片手に微笑んだ。





「確かに迷惑はかけて良いものじゃないわ。
だけど、迷惑をかけるってことは、相手を信頼している証拠にもなるとわたしは思うわ」


「信頼している証拠……?」


「ええ。
信頼しているからこそかけられる迷惑もあるんじゃないかしら?」


「……」




信頼しているからこそ、かけられる迷惑……。




「きっと迷惑って言うから、駄目なことしか浮かばないのね。
甘えるって言い方にした方が良いかしら?」


「……甘える?」




そんなこと、俺は一切したことがない。




「たまには周りを気にせず肩の力を抜いて、他人に弱みを見せたり甘えたりしても良いんじゃないかしら?」


「……」


「桜太くん。
あなたはイケメンだけど、とても損をしているわ」


「損、ですか?」




顔が良くて成績が良くてスポーツが出来て。

損なんて…したことがない。

むしろ得だらけの気がする。







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