君の嘘を知らなくて(仮題)
俺は床に胡坐をかいて座った。
好き、なのか?
もう、恋愛感情なんて忘れてしまった。
俺には真幸だけだと信じていたから。
あの時。
真幸に、他の男とも関係を持っていると言われた時。
追いかけていれば、許せなかったら別れていれば。
真幸が死ぬこともなかったかもしれねぇ。
幸恵さんが倒れることもなかったかもしれない。
おじさんが残された“家族”を愛していけたかもしれない。
アイツが……苦しむこともなかったかもしれない。
「……俺のせいじゃん、本当に…」
好きになる資格なんて、俺に存在しない。
真幸を…白井家を壊した俺が、幸せになって良いはずがない。
「……ごめん、アヤメ」
だけど本当に。
月明かりの下涙目で笑うアヤメは、綺麗だった。
馬鹿で、単純だけど。
お前は誰よりも綺麗で、真っ直ぐだ。
「……早く起きろ、アホ!」
「んー…?
うわぁ顔近い近い近ーいっ!」
せめてもう少しだけで良いから。
お前の傍で、笑わせて。