君の嘘を知らなくて(仮題)
☆☆☆
放課後。
俺は夕焼け公園に向かった。
「……遅れました」
「んー?
別に良いよ、待つのは慣れてるから」
ニコッと微笑むのは、倉田胡桃。
今まで望月ファンブックとかいう意味不明な本(雑誌?)の編集長ってだけのイメージだったけど。
……まさか、倉田姓だとは。
「気が付いた?私のコト」
「……気付きました」
「もう、遅いよ。
私はずーっと気が付いていたのに」
「…自己紹介は、真面目に聞いたことがないんですよ」
「それなのに男女全員の名前を覚えられるの?」
「自然と最初に僕の元に来た時、名前を言いますから。
自己紹介なんて聞かなくても良いんですよ」
「あー。
確かに人に最初に話しかける時、名前言うもんね」
倉田胡桃は笑みを崩さぬまま、頷いた。