君の嘘を知らなくて(仮題)








倉田胡桃は鼻で笑った。





「お母さん?
あんな人、私のお母さんじゃないわ」


「…まぁそう言うのも無理はありませんね。
幸恵さんからあなたことを聞いたのは、一度もない。

おじさんからも同様に、です。
言ってしまえば真幸からも。

これがあなたが真幸に復讐したい理由だ」





血の繋がったはずの両親からも、姉からも。

彼女は存在を認められていなかった。

許せなかったはずだ。

だから愛されている…真幸に復讐しようと決めた。

これが、経緯のはずだ。





「そう。
愛されることしか知らないアイツに、私の今まで味わって来たことを教えてあげる。
それが私の復讐目的。

……死ぬまではそう考えていたわ」





真幸が事故で亡くなり、相手は俺へ変化した。





「だから、僕にしたんですね」


「……前までは、そうだったよ」






前までは?

今は違うということか?









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