君の嘘を知らなくて(仮題)
「どう思った?」
「……その男子、本当に馬鹿だと思いました。
アヤメが、凄く…可哀想だと思います」
「もし望月くんがその男子だったら、どうしたい?」
「アヤメに謝りたいです」
「じゃあ、謝っておいで」
「……は?」
「もう面倒だから名前言うね。
アヤメが嘘をついて名乗った名前は、白井真幸。
アヤメが好きだった相手は…あんただよ、望月桜太」
胡桃さんが言った真実に。
俺はすぐに信じることが出来なかった。
「…嘘、ですよね」
「嘘じゃない。
私はアヤメの傍に居たの。
だから、全部知ってる。
アヤメが自分は白井真幸だと嘘をついたことも、
アヤメが望月くんに恋をしていたことも、
望月くんが勘違いをして真幸を好きになったことも。
私は、全部知ってる」
かつて、河西彩愛だと名乗った胡桃さんは言っていた。
俺のことも真幸のことも、全部知っていると。
……本当に、全部知っていた。