君の嘘を知らなくて(仮題)

それぞれがついた嘘










「……ん?」





日直だったあたしは帰り道、道の丁度真ん中に、猫が座っているのが見えた。




「ユキくんじゃん。どうしたの?」


「にゃ~」




すりすりとあたしの足元にすり寄ってくる。

可愛くてしゃがみ込んだあたしは、そっと頭を撫でた。

嬉しそうに喉を鳴らす姿が、本当に可愛らしい。





「にゃっ!」


「うん?」


「にゃっ!にゃっ!」




ユキくんは離れると、タッと走り出した。

あたしは思わず制服姿のまま追いかけた。




「ユキくんどこ行くの!」


「にゃっ!!」


「にゃ、じゃなくて!」





猫に話しかけたまま、全力疾走をする女子高生。

あたしは随分変な人になっていると思う。







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