君の嘘を知らなくて(仮題)







「……実は」





途中からお姉ちゃんが加わりながらも、あたしはふたりに、桜太に告白したことを伝えた。

そして、小学生の頃、桜太に恋をしていたことも。




「桜太は、あたしのこと、友達としか思っていないんだと思う。
桜太の心の中には、今でも真幸さんが居るんだから。

だけどあたし、桜太のこと、今でも諦めきれていないんだ…」




告白し、答えられないと言われた。

胡桃に言われた、桜太と一緒にいるのは無理って言葉も、頭の中をループしている。

…確かに桜太も胡桃も、間違ったことは言っていない。




でも、ふとした瞬間にあたしの目は桜太を追ってしまっている。

授業中も、休み時間も、家にいる間も。

誰といたって、どこにいたって、ふとした瞬間に桜太を思い浮かべてしまう。

そんなあたしを見て、胡桃が何とも言えない表情をしていても。




胡桃は親友として、あたしの忘れた過去を教えてくれて、桜太を好きにならない方が良いと言ってくれている。

間違っていないし、大抵の人は、今も真幸さんを想う桜太を好きでいるのは諦めろと言うかもしれない。





「…どうやったら、忘れられるかな。
どうやったら、この気持ち、なくなるかな?」




仲の良い新婚夫婦に問いかけて良い話じゃないと思うけど。





「あたし、桜太を忘れたい……」





“彼女”がいる人に、恋をした。

叶わないのに。

忘れてしまいたいのに。






「忘れたいのッ……!」






忘れられないのは、どうして?








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