君の嘘を知らなくて(仮題)
「お父さんから聞いていたわ」
私は入り口付近に立ち止まったまま驚いていた。
何で…お父さんが私のことなんて?
いつも仕事…仕事で、生活サイクルが違うから、滅多に家の中で会っていなかったのに。
「久しぶり、胡桃」
「…………」
私は何も言えなかった。
驚きすぎて。
現実を受け止められなくて。
「……ごめんなさいね。
今まで辛い思いさせてきたわね」
…あれ。
どうしてだろう。
視界が徐々に滲んでいく。
お父さんとお母さんの顔がダブって見える。
「……胡桃」
あぁ、もう。
限界だ。
「……お母さん」
私は床に1粒、涙をこぼした。