君の嘘を知らなくて(仮題)









☆☆☆






「比べてしまっていたんだよなぁ。
お前は真幸と違ってしっかりしているから。

自然と大丈夫だなんて思ってしまっていたんだろうな」





久しぶりに、私の作った料理をお父さんと向かい合って食べる。

夕食をこうやって誰かと食べるのは、本当久しぶり。






私はあの後病室の中で思い切り泣きじゃくった。

わんわん子どものように泣く私を、両親は苦笑しながら優しく見守ってくれていた。




物心つき、真幸と比べられ生きてきた時から。

誰かの前でああやって周りを気にせず涙を流したのは、初めてだったかもしれない。

両親や真幸の前で泣くまいと思っていたし、親友のアヤメの前でさえも泣かなかった。

泣くことは弱みだと、思っていた節があったからだろう。




思い切り今までの哀しみや嫉妬心、
孤独感を吐き出すように泣いて泣いて泣きまくった私は。

椅子に腰かけベッドの上に頭を預け、眠りに落ちた。

目覚めた時、面会時間は終わりを告げていて、私とお父さんは帰宅した。




無言で、でも並んで帰ってきたお父さんは。

私の作ったご飯をリクエストし、食べながら色々と教えてくれた。




私が知らなかった、家族について。








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