君の嘘を知らなくて(仮題)
「おはよっ!」
「……おはよう」
コンコンッと机を叩かれた後響く、弾けたような笑顔と声。
俺は満面の笑みの倉田胡桃を見て、少し笑った。
「…幸恵さんと仲直り出来たわけ?」
「知ってたんだ?
可笑しいと思った。
望月くんがお母さんに言ってくれたんだね、私のこと」
真幸しか頭の中にない幸恵さんに。
俺はもう1人の娘の存在を教えてあげた。
最初は信じ切れていなかった幸恵さんだけど、
俺は真幸から預かった手紙を渡した。
真幸の死後、おじさんに貰った手紙。
そこにはもし自分が死んだ時、幸恵さんに渡してほしいと前置きがしてあった。
手紙の内容は、真幸が大好きだった妹のこと。
自分が不器用で素直じゃないあまり、妹を傷つけてきたことを、真幸は気にしていた。
正直デートの最中も、真幸は妹のことばかり話していたのを思い出す。
『……胡桃…ごめんなさい…』
幸恵さんは真幸からの手紙を読み、胸元に抱きしめ泣いていた。
そしていつか来るであろう倉田胡桃が来た時、名前を呼んであげてほしいと頼んだ。
真幸を殺してしまった俺の、
胡桃さんに出来る唯一のことだと思ったから。