君の嘘を知らなくて(仮題)
バターンッ!と乱暴に閉ざされる扉。
あたしはその場に両腕を抱いてしゃがみ込んだ。
「最低!ノックぐらいしてよ!」
「お前が遅いのがいけないんだろ!?」
「もうやだ~!お嫁にいけない~」
「大丈夫だ、お前を貰いたいなんて思う奴、存在しない」
「最悪ッ!最低ッ!!」
あたしは涙目になりながら、制服へ着替えた。
扉を恐る恐る開けると、誰もいなかった。
ほっと胸を撫で下ろし、リビングへ向かう。
「おはよ~…」
「おはようアヤメ、どうしたの。
朝っぱらから大声出して」
「おはようアヤメちゃん」
「おはようお姉ちゃん、風太さん。
騒がしくしちゃってごめんね。
何でもないから……」
恥ずかしくって何も言えないよ。
あたしは昨日の椅子に腰かけた。
隣には素知らぬ顔でパンを食べる、望月くんの姿。