調理部なんてどうでしょう?
「お願いします!」

「えっと・・・。」

ここまで頼まれたら、いくら私じゃなくても断れない気が・・・。
宮島君が今度は、無言の威圧をかけながら見つめてくる。


うーん、まぁ週2って言ってたし、正直、料理なら運動と違ってハードじゃなくて楽しそうだとは思うし・・・。

「じゃぁ、いいよ。入ろうかな。」

ここまで頼まれてたら、絶対断れないよね。

「マジ?!よっしゃ部員ゲット!!」

宮島君は驚くほどの喜びようで、その場で大声で歌いだしそうだ。

「じゃぁ、早速一緒に来てよ!」

「え?今から?」

「おう!こっちこっち!」

もう活動始めるのかな?
宮島君がうきうきと私の前を歩き出したので、とりあえずお弁当を机の上に置きっぱなしにしたまま、ついて行くことにした。

特別教室の多い、西側の校舎への廊下を抜けて、人気の少ないところまでくると、2階に下りて一番端の教室まで行く。
宮島君について行きながら、部室がもう決まっているのかなぁと思っていると、宮島君は足を止めてこちらに振り向いた。

「ここが調理部部室予定の、調理室!」

「あ、ここかっ。」

まだ5月下旬で、入学して少ししか経っていないので、調理室の場所が分からなかったけど、こんなところにあるんだな。

そこまで考えて私は調理室の前に誰かがいることに気づいた。


その人物を見て私は思わずポカンと口を開けてしまった。
廊下の窓を開けて肘をつき、外を眺めている。それだけのポーズなのに、異様にきれいな絵になっている。高めの鼻、色素の薄い茶髪。その容姿の一つ一つが美しいバランスをとっていて、そこだけが別世界のようだ。

「猫塚先輩!」

その人物に向かって宮島君は手を振った。


「何だ、宮島か。」

猫塚先輩と呼ばれたその男子生徒は、こちらをちらっと見てぼそっと呟いた。

「あれ、部長はどこっすか?」

「荒川先生に話に行ってる。それより、お前本当に部員連れてきたな。」

そう言いながら猫塚先輩は視線を私に向けた。



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