調理部なんてどうでしょう?
華嬢部長は話がすむと、くるりと背を向けて例のごとく「おーっほっほっほっほ」と高らかに笑いながら荒川先生と職員室の方へ帰ってしまった。

「・・・・・。」

後に残された私と宮島君、猫塚先輩は華嬢部長の笑い声の余韻が残る調理室前の廊下にたたずんだまま沈黙するのみだ。




あぁ、最悪だ。地味で平和だった私の生活は果たしてこれからも続いてくれるだろうか・・・?調理部って言うから、もう少し穏やかなメンバーだと思ってたのに・・・。





絶望する私に宮島君は遠慮がちに声をかけてきた。

「九重さん、・・・えっと、教室戻る?」

「・・・うん、そうする。」

「じゃ、じゃぁ、猫塚先輩、また放課後に。」


宮島君は猫塚先輩に頭を下げて私に「戻ろっか」と目で言ってきた。
私は頷いてから猫塚先輩の方に向き直り、宮下君と同じように頭を下げた。

「あの、これからよろしくお願いします。」

猫塚先輩は、表情一つ変えずに、何の反応も全く示さない。私はそういう感じの人なのかなと思い、もう一度ぺこっと頭を下げて宮島君と戻ることにした。しかし、それまで華嬢先輩が来てから口を開かなかった猫塚先輩は「新入部員。」と私の背中を呼び止めた。

「名前、何?」

「あ、九重 明日菜です。」

「猫塚 隼。よろしく。」

「よ、よろしくお願いします!」

私は慌てて頭を下げた。
猫塚先輩は、用はそれだけだったらしく私が頭を上げたときには背を向けて向こうの曲がり角に消えていくところだった。


「じゃぁ、今度こそ戻ろうぜ。」

宮島君はいつものスマイルで私の前を歩き出した。


「皆変わってるだろ?」

「え?」

宮島君は振り向いて私と歩調を合わせながら、聞いてきた。
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