スロウ・スノウ
「初雪って、なんだかわくわくしませんか?」
「あぁ、うん、まあ」
たしかに。
雪国に暮らしている私たちにしてみれば、雪なんて厄介なものでしかない。
バスや電車の遅れ、運休なんて日常茶飯事。
家の前の除雪なんてかなりの重労働。
雪なんか降ってこなきゃいいのに!
なんて思うことはしょっちゅうだ。
でも。
初雪は、別だと思う。
景色は一晩でガラリと表情を変える。
初雪は辺り一面を銀世界に染めながらも、
数日後には溶けてしまう。
そんな一瞬を楽しむ初雪が、私は嫌いではない。
「あ、先輩。ココアを買ってきたんです。一本どうぞ」
彼は椅子に掛けていたリュックの中から、200ミリリットルサイズのボトルを2本取りだす。
そして片方を私の方へ寄越してきた。
「ありがと」
手渡されたボトルが私の指先をじんわりとほぐしていく。