スロウ・スノウ
無意識のうちに握りしめた手のひらに、爪が食い込んだ。
彼女にどんな言葉を投げつけられても、その全てを受け入れよう。
そう、思ったとき。
「──忘れ物を、していたんです」
「わすれ、もの…」
彼女の思いがけない言葉に、握ったこぶしが緩んだ。
「春瀬君、今日教室に忘れ物をしていて。
返そうと思っていたんですけど、タイミング、逃しちゃって、」
「……」
「っだから、その…これを春瀬君に返してあげてもらえませんか」
そう言って、彼女がゆっくりと差し出してきたもの。
私は思わず目を見張った。