スロウ・スノウ



「…先輩。今なら、間に合います。たぶん」





「間に、合う…?」





静かに言った彼女の言葉が、耳のなかで何度かこだまする。




間に合うって、何に。




まだ校舎からそう遠く離れていないであろう春瀬を追いかけること?

彼との関係を修復すること?




それとも、






春瀬との思い出を残す権利を、得ること?










「……君は、それでいいの、」




だって、春瀬のこと、好きなんでしょう?

最後のその言葉は、喉の奥に張り付いてしまったかのように声にならなかった。





どうして、この子は私を罵らないのだろう。


どうして、こんな私に道を示そうとするのだろう。



どうして、




「いいも何も…わたしはこれが正しい選択だと、確信しているから、先輩に声をかけたんです。




先輩、行ってください」




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