スロウ・スノウ
遠目に見てわかるほど驚いた表情の彼がやっと振り返り、
私の姿を認める。
ぽかん、となんとも間抜けな顔でこちらを凝視する春瀬。
「せん、ぱい……!?
って、先輩上靴のまんまじゃないですか!!片足は靴下だし!
とりあえず、中に入りましょう」
怒ったような顔で私に駆け寄り、私を校舎の玄関まで引っ張っていく春瀬。
私は彼に腕を引かれるがまま。
「──足、これで拭いて下さい。
すみません、さすがに靴下の代えは持ってないんで、冷たいの我慢してもらわなくちゃなんですけど」
靴箱の前に私を座らせた私に、フェイスタオルを手渡してきた。
春瀬は何も悪くないのに、本当に申し訳なさそうな顔をしている。
その顔をみたら、あー、春瀬だ…と意味もなく笑みがもれてしまう。
「先輩、笑い事じゃないですよ。風邪引いたらどうするんですか!」
「うん、ごめん」