スロウ・スノウ
「すっ…すみませんありがとうございます」
春瀬は焦ったように早口でそう言い、半ば引ったくるようにして本を受け取った。
再び、沈黙。
どうしよう、なんて話せばいい?
なんて切り出そうかもろくに考えずに飛び出してきたことを後悔する。
が。
「ごめんなさい……気持ち、悪いですよね。」
沈黙を破ったのは春瀬の方だった。
その形のよい唇をきつく噛みしめ、何かに堪えるような苦しそうな表情。
突然の謝罪とその表情に驚き、私は思わず立ち上がる。
「気持ち悪いなんて、なんで私がそう思うの」
「図書室で会う度図々しく話しかけたり。
勝手に先輩と仲良くなったつもりになって。
挙げ句の果てに、先輩の好きな本を何度も読み続けるとか……気持ち悪い以外の何でもないですよ!」