愛の歌、あるいは僕だけの星

 銀也が、どこか拗ねたように言う。そしてすぐに、ことりとカメラをテーブルに置いた。湯気の立つオムライスの乗った大皿と麦茶を入れたグラスを運び、ようやく腰を下ろした。

「すごい、うまそう」

『上手に出来てよかったね。あったかいうちに、早く食べてみて』

「うん。いただきます」

 銀色のスプーンを、卵に突き刺す。ふわりと身がほどけて、つやつやとしたケチャップライスが顔を出す。上手に掬い、ぱくりと頬張った瞬間、銀也は目を瞬かせた。

『どう?藤原君』

「やば……。めちゃくちゃうまい。なにこれ、人生で食べたオムライスの中でダントツ!」

『ほ、ほんとう?』

「嘘ついてどーすんだよ。ほんと、うまい」

 きらきらと瞳を輝かせた銀也を前に、なぜだか如月が泣き笑いのような表情を浮かべる。

『……そっか、よかったあ』

「如月、ありがと。もしかして、これ。お礼のつもりだった?」
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