愛の歌、あるいは僕だけの星
「おーい、藤原ぁ、おまえ、三原さん可愛いからって照れてんじゃね?珍しいー!」
その瞬間、やだぁ、と嘆く女子達の声と騒ぎ立てる男子達の声でクラスは一気に騒然となる。
『ふふ、照れてんじゃね?』
男子生徒のまねをして、となりでにやにやと銀也を見上げる如月を一睨みした後、なんだか無性に苛々して無言のままどかっと席につく。
「おい、静かに!それじゃあ、三原の席だが……」
担任が、ぐるりと教室を見渡した。
窓際、前から三番目。ひとつの空席には、一輪のマーガレットが活けられた藍色の花瓶が置かれている。それをちらりと見て、ぽりぽりと刈り上げられた頭をかく。このクラスは偶数だから、縦横に余りなく机が配置されている。新しい席をどこに並べようか、豪快なくせに生真面目な教師は大いに悩んでいるようだった。
「先生?」
三原が、小さく首を傾げながら担任を見る。
「ああ、すまんな。おい、藤原」
窓際の一番後ろという、居眠りには絶好の場所に位置する銀也の席。既にこの状況に飽きて頬杖をついていればいきなりのご指名だ。面倒に思いつつ視線だけをあげる。