愛の歌、あるいは僕だけの星

「すみません、後藤先生から呼ばれてたの、すっかり忘れてました。職員室まで行ってきます」

「……え、そうなの?」

「はい。それで、あの……、藤原君」

 いきなり、話を振られた。銀也は、ぱちぱちと瞬きする。三原が、それはそれは申し訳なさそうに眉を寄せて俯いてみせる。

「早速なんですが、職員室、連れて行ってもらっていいですか?」

 小さな顔に、ずいぶんと大きな瞳が上目遣いに銀也を見る。その瞬間、ぶわりと取り巻く空気が変わる。明らかに嫉妬に燃える女子、泣き崩れる男子、様々な感情が溢れ出るのが目に見えるようだ。

『カオス』

 それまで黙って様子を見守っていた如月が、呆れたようにとなりでぽそりと呟いた。
< 114 / 341 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop