愛の歌、あるいは僕だけの星
『って、おい、藤原君。お昼休みにはまだ一時間ありますけど。なにふつうにお弁当箱抱えちゃってるの。次は音楽の授業でしょうが』
「だって、リコーダー苦手なんだもん」
『だもんって。可愛い子ぶってもサボりは駄目だよ』
「小学校の時さ、放課後に忘れ物取りに教室戻ったら、クラスメイトの女の子が俺のリコーダー一生懸命くわえてたの目の当たりにしたんだよね。それがずっとトラウマで」
『ぎゃー……!!!イケメンあるある、怖い!』
顔を真っ青にした如月が、悲鳴をあげる。なにやら随分とショックを受けたようで、彼女はがっくりと肩を落とし、「早くごはん行こ」と呟いて、とぼとぼと先を歩いていく。
何だか、可哀想なこと言っちゃったかな。銀也は肩を竦めつつも、彼女の後を追う。ただ、早く如月と屋上へ行きたいが為に出した昔話だったのに、嫌な想像をさせてしまった。