愛の歌、あるいは僕だけの星
確かに、学校でも人気の可愛らしい子だったから、まさかこんなことをするなんてとその時は吃驚もした、ような気がする。いつからか感情と物事を切り離してしまいがちだった銀也は、幼心にも、まあそういうものなのかなとあっさり片づけてしまうようなところがあった。
けれど、そんなことをきっかけに時折、ふと考えることもある。
恋とは、一体どんなものだろう。もうこどもでもないくせに。他人の話を聞いても、恋愛ドラマを見ても、女の子と付き合ってみても、セックスしたって今一つぴんとこないのだ。
女の子に好きだと告げられても、彼女達が自分に向ける好意の言葉がちっとも理解出来なくて、いつも適当に聞き流している。
銀也君は、背が高くって、きれいで、にこにこしてるくせにそっけなくて、けれどほんとうは優しいところが、とくべつ好き。
何の呪文だろう。と、思う。こんな人間は、自分でなくたって他にもたくさんいるだろうに。結局、じぶんが彼女達のことを何にも知らないように、彼女達だってじぶんの容姿ばかりで中身に何て興味がない。お互いさまだ。
それなのに付き合い始めてみれば、望みを叶えてあげたところで、必ずしつこく迫り束縛される。もっともっとと欲張られるのは面倒だから、やっぱり恋人なんていらない。