愛の歌、あるいは僕だけの星

『どうしたの?』

「俺……、特別とか、そういうの嫌い」

『……藤原君』

 明らかに機嫌を損ねている。銀也が、ここまで露骨に好き嫌いを表に出すことは珍しいので、心配になって真下からのぞき込む。

「特別とかうざいし」

『どうして?』

「わかんない。けど、嫌いなんだよそういうの」

 綺麗すぎるほどの顔をまじまじと眺めて、そして問う。

『じゃあ、藤原君の一番は?』

「はあ?おちょくってんの?だから言っただろ、俺は」

『おちょくってない。特別じゃなくて、一番を聞いてるの』

「アホか。それ一緒だろ。じゃあ、如月は何なの?そんなこと言うなら今すぐ述べてみよ」

『なにその命令形。まあ、いいけど。そうだなあ、あたしの一番は、まずあたしの家族』

「ふうん」

『……に、親友のレンゲでしょ、映画とドラマ鑑賞に、あ、こないだ藤原君と一緒に見た星空ね』

 ぽんぽんとあげていく"一番"に、銀也が心底呆れた顔をする。

「おい、一番って言ったくせにいくつあげるつもりだよ。大体なんだ、星空って」

『藤原君は、頭いいくせに馬鹿だねえ……』
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