愛の歌、あるいは僕だけの星
「なんだと!」
声を上げる銀也に、くつくつと笑いながら夏が胸を張りながら言う。
『一番はね、番号や順位じゃないんだよ。最高っていう意味だから。だから、いくつあってもいいんだよ』
「……!」
『でも、あたしがまだこの世界にいる理由は、一番にはないと思うんだ。きっと、きっとね。それこそあたしの、特別にあるんだよ』
銀也はしばらくの間、何も言うことをしなかった。ようやく口を開いて、どこか頼りない声音を漏らした。
「はやく、見つかればいいね」
『うん。ありがとう、藤原君』
「……はいはい。なんだか、段々冷えてきたな」
どこからか流れてきた雲が、いつの間にか太陽を覆っていたせいで、日差しが閉ざされている。ひんやりとした空気に、銀也がそっと自分の腕を撫でた。
『まだ六月だしね。藤原君、ブレザー教室に置いてきちゃったじゃん。そろそろ戻ろうよ』
「そうするか。昼休みも、ちょうど終わる頃だしちょうどいいだろ」
屋上の入り口から続く階段を降りていれば、丁度こちらに向かって階段を上がろうとしている人影が見えた。今の人影は。思わず、隣にいる銀也を見上げれば、彼も気がついたようで一瞬にして表情を隠す。