愛の歌、あるいは僕だけの星
音楽室は、校舎の裏手に位置するらしい。そこには、まさに女の子から告白を受けている銀也がいた。顔を真っ赤にして、銀也に懸命に言葉を口にしている女の子に対し、銀也はどこか浮かない表情をしている。
「銀也君、モテるのね」
ぽつりと呟いた三原の言葉に、レンゲがぴたりと演奏する手を止めた。ぎい、と椅子を引いて視線を向けた。
「……ああ、もしかして藤原、真下で告白でもされてる?」
「まさにその瞬間」
「見た目だけはいいからね。見た目だけは」
嫌そうに言うレンゲに、三原が不思議そうに首を傾げる。
「神谷さん、銀也君のこと嫌いなの?」
「別に嫌いになるほど関わりもないから良く知らなかったけど。クラス委員を夏から引き受けてから、仕事でやりとりすることも多くなってね。結構いい加減だし適当なのよ、藤原って」
「夏って?」
「元クラスメイトで、私の親友。藍色の花瓶が置いてある席に座ってたんだけどね、ことしの春に事故で」
濁すようにレンゲが呟いた言葉をすぐに理解した三原は、「そうなんだ」と小さく呟く。そうしてすぐに窓の外へ視線を向けた彼女に、レンゲはすぐに何かを察したようだった。