愛の歌、あるいは僕だけの星
「藤原君、ちょっと変わりました」
「え?」
「あれ、気づいてなかったですか?結構、みんな敏感に感じ取ってると思うけど。なんだろう、少し優しくなった。さっきだって、多分前の藤原君だったらその場で用件聞いて、誰が見てようと関係なく、ばっさりお断りしたはずです」
だから、少し焦っちゃいました。このままじゃ、ますますみんな、藤原君のこと好きになっちゃうんじゃないかって。そう、彼女は言った。
どきりと、心臓が嫌な感じに大きく鳴った。妙な焦燥感を、ここのところずっと抱えていた。自然と、自分でも気づかないうちに何かが変わっていってしまうような。
「……あ!なんか、変なこと言っちゃってごめんなさい。あの、答え……、もらえますか」
彼女は言う。どくどくと音を立てる心臓を、制服の上からぎゅうと押さえる。うるさい。うるさくて、仕方ない。
「ごめん」
一瞬、彼女はとても痛そうな顔をして、けれどすぐに泣き笑いのような表情を浮かべた。「聞いてくれて、ありがとうございました」そう言って、銀也に向かってぺこりと頭を下げ、そのまま背を向け去っていった。