愛の歌、あるいは僕だけの星
「夏……、は、何の花が好き?」
名前を呼ぶだけで、何をこんなに戸惑ってんだろう俺……。眉を寄せる銀也を見上げた夏がくつくつと笑う。
『んー、そうだなあ』
夕暮れの通学路に人は少なく、日中のように人目を気にする必要はない。銀也は、となりでうんうんと唸りながら悩む夏に、「そんな悩まなくても」と思わずつっこむ。
『だって、あたし好きな花多いんだもん』
「例えば?」
『ガーベラも好きだし、カスミ草も好きだし、ひまわりもバラも……』
「カスミ草!?」
『なんでそんなに驚くのよ』
「だって、あれだろ。あの、千切りキャベツと同じカテゴリーの」
『ちょっと!失礼だなあ。カスミ草にも千切りキャベツにも!あたしは、その控えめな感じが好きなの。まあ、銀也みたいに一目で注目浴びちゃう人には似ても似つかないような花だろうけどさ』