愛の歌、あるいは僕だけの星

「ありがとうございました。是非、またお越しくださいませ」

「……はい、あの……、ありがとうございます」

「ふふ、彼女さん、絶対喜んでくれると思いますよ!」

 思わぬ一言に愕然として、声を失った銀也を照れていると勘違いした店員が、「お客さまに花束をもらえる方が羨ましいです」なんて言って手を振った。

 顔を赤くした銀也は、そのまま逃げるように店を出た。花束を方に担いでスタスタと歩く。

『めっちゃ可愛いねえ』

「まあまあな」

『恋人に贈るだなんて、キザな男だと勘違いされちゃったね』

 茶化すように夏が言うのにしぶい顔をしつつ、太陽が落ちて薄暗くなり始めた空を見上げる。
 墓地にたどり着く頃には、薄闇に星がちらちらと瞬き始めていた。まだ初夏ということもあって、涼しい風がさわりと頬を撫でる。

『なんだか、自分の墓を見るのって変な気分……』

 夏は、墓の前に立って小首を傾げた。その横で、花束を綺麗に活け直しながら銀也が夏を見上げる。
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