愛の歌、あるいは僕だけの星
亜矢子 Ⅰ
『誠東学園高校の藤原って知ってる?』
初めて藤原銀也の存在を亜矢子が知ったのは、転校する前、その頃一緒に行動していた女の子たちの間で上がった噂話だった。
『誰?それ……』
『藤原銀也君っていうんだけど、超かっこいいんだって!そんじょそこらの芸能人よりよっぽど!』
『へえ……、そうなんだ』
『亜矢子、興味ないの?』
たいそう驚いた表情を浮かべる友人に、亜矢子はぱちりとひとつ目瞬きをする。可愛いものとカッコいい男と噂話が大好きな、一般的な感性を持つ女子高生たちだ。興味がないのかと言われたら、ちっともなかったのだけれど、それは口に出さずに曖昧に微笑んだ。
『んー、ないこともないけど。でも、凄いね。こんなところまで噂が広まるなんて。でも、そんなにかっこいいなら可愛い彼女もいそうだね』
『それがね、誠東に通ってる子に聞いたんだけど、そういう特定の子はつくってないみたい』