愛の歌、あるいは僕だけの星
ラッキーだよね!みたいな表情で両手を握りしめて瞳をきらきらとさせている彼女に呆れてしまう。それは、不誠実なだけであって喜んでいいところじゃない。まったく、なんてばからしい。会ったこともないような人間、しかもただの一般人にどんなお花畑な妄想を繰り広げているのだろう。
『これ、ちなみに藤原君の写メ』
差し出されたスマホの画面をみる。視線はこちらに向けられておらず、明らかに盗撮されたものだ。ズームで撮影されたのか、鮮明さには欠けるものの、姿かたちはよくわかる。亜麻色の瞳、透き通るような肌にかかる薄茶色の髪、すらりとした体躯に少しだけ着崩した誠東の制服は驚くほどよく似合っていた。
確かに、カッコいい。他校にファンが出来るのも、分かる気がした。平凡で退屈な日常に、彼のような人がいたら誰だって色めき立つのも仕方ないとも思った。
『ね、カッコいいでしょ!』
『確かに、すごい美形だね……。でも、これだけ整ってると逆に近寄りがたいかな』
『確かにねえ』