愛の歌、あるいは僕だけの星
小さく溜息をついた。退屈だな、と欠伸をかみ殺しながら人混みを避けて裏庭へ出る。ポプラの木がたくさん植えられていて、風に靡いて涼しげだ。あのベンチで待っていよう。亜矢子が足を向けたときだった。
『は?ていうか、何様のつもりだよ』
若い男の声が、不意に外壁の奥から聞こえた。そっと、声のするほうに視線を向ける。そこには、誠東学園の制服を来た男の子と、女の子。壁にもたれ掛かりながら、面倒臭そうな顔で彼女を見つめている。
さすがに目の前を突っ切るのも気まずい。こんな場所で、修羅場を繰り広げないで欲しいと、亜矢子は小さく舌打ちする。方向転換して、元来た道を戻ろうとしたときだった。
『銀也、酷いよ!』
ヒステリック気味に、彼女が叫んだ。反射的に、振り返る。そして、瞬時に確信した。前に見せられた写真と同じ顔。間違いない、彼があの有名な藤原銀也だ。