愛の歌、あるいは僕だけの星

「……不機嫌そうな銀也もかっこいい」

「うん……。色気あっていいよね」

 好き勝手な言葉ばかりが耳に届くけれど、銀也はそれでさえも聞こえないふりをしているようだ。

「銀也君、どうしたの?」

 そっと隣から声を掛けた亜矢子に対し、クラスメイトがぎょっとした顔をするのが空気で分かった。こんなにも不機嫌な銀也に声を掛けられるだなんて、無知であるがゆえの諸行だ、とでも思っているんだろう。

 指をくわえて見ていたらいい。
 亜矢子は、ひっそりと口角をあげる。

「別に」

「うそ。じゃあ、なんでそんなに苛々してるの?」

 誰かあの女を止めて!クラスメイトの、特に女子たちを中心に無言のまま視線が交わされているようだけれど、咎める人はいない。

「吐き出したほうが、楽になることもあるよ。わたし、何でも聞くし」

 三原、あいつ絶対しばく。そう、派手な部類の女子が口々に呟き始めるのがしっかりと聞こえる。そもそも、初日から亜矢子が銀也へと急接近したことも、彼女達にしてみれば感に触ったのだろう。
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