愛の歌、あるいは僕だけの星
「もういいじゃない、亜矢子。ほっときなって。何かあってからじゃ遅いんだから」
この険悪な雰囲気を破ったのは、レンゲだった。クラス委員長として、これ以上もめ事を起こさないようにと気を配ったのだろう。心配そうに事態を見守っていた他のクラスメイトも、ほっとした様子でそれぞれの雑談へと戻っていった。
小さくため息をつき、教室を出て行くレンゲの後を亜矢子が追った。
「レンゲちゃん」
「亜矢子、何?ついてきたの」
「さっきは、ありがとう。ごめんね、わたし、全然空気読めてなくて」
レンゲは、困ったような顔をして亜矢子を見つめた。
「頑張ってるみたいね」
彼女は、亜矢子が銀也のことを好きだと思っているから、平坦な声音でそんなことを言った。それに、少しだけ困ったような表情を浮かべる。