愛の歌、あるいは僕だけの星
そうしてレンゲと別れ、ひとり廊下を歩きながら考える。この学校に転校してきて、もうすぐ三週間が経とうとしている。銀也を落とそうと接触を試みているけれど、正直、そう成果があるわけでもなかった。
(さすがに、あれだけモテるとなあ……)
自分自身が可愛いことは充分に理解しているつもりだ。今まで、たくさんの男から告白をされたし、同じくらい女からは妬まれもした。
けれど、見た目だけで落とせるその辺の男とは違うのだと、改めて実感した。何せ、あの容姿だ。学園のミスコン女王も、読者モデルをしているという子も、皆が皆、彼を狙っている。
据え膳食わぬは、の要領で銀也も銀也でその女達を時折つまみ食いしているようだけれど、亜矢子がつきたいのはそんなポジションじゃない。
(わたしだけが銀也君の理解者。だからこそ、わたしだけを求めてもらわなきゃ。そうして、今度はわたしがあっさりと銀也君を捨ててやる。それはわたしを裏切った罰だよ)