愛の歌、あるいは僕だけの星

 告白を受ける銀也を見て、レンゲは彼が変わったと言った。それを聞いた時、確信したのだ。やはり、藤原銀也を変えた人間がいる。それは、おそらく誰しもが感じる明白な変化なのだろう。

 今まで、たくさんの人間が自分の周りを取り巻いてきた。鬱陶しくて、嫌で嫌で仕方ない。何しろ、亜矢子にはその理由がわかっていたから。

 わたしを利用して、美味しい思いがしたいだけでしょう。笑って真正面から言ってやろうと、何度思ったことか。本当、人間っていうのはずるい生き物だ。無意識に、人を利用することをいとわない。

 結局のところ、亜矢子の周りにいる人間は、自分のことなんて知ろうともしない。ただ見た目がよい恋人を友人を、自慢したいだけ。小さくて、くだらない。

(銀也君なら、このむなしい気持ちをわかってくれるって信じてた)

 胸が苦しい。
 銀也が、銀也の中にある扉を開けて出て行ってしまう前に、どんな手を使ったって、なんとか振り向かせなければならないのだ。
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