愛の歌、あるいは僕だけの星


 日が傾き、オレンジ色に染められた廊下。生徒会室の僅かに開いた扉から、話し声が漏れてきた。

「これで、一段落ですね。ひとまず、ここまで片づけられたら上出来です。おつかれさまでした」

「……はいはい。お疲れ、蒼井」

 生徒会長をつとめている銀也と、蒼井……、というのは副会長の蒼井静香のことだろう。銀也と違って派手さはないけれど、端正な顔立ちと落ち着いた雰囲気で密かに人気があるらしい。

「それじゃあ、お先に失礼しますね」

 その蒼井の一言に、亜矢子は慌てて廊下の角に身を隠す。幸いなことに、生徒会室から出てきた蒼井は亜矢子がいるのとは逆の方へと去っていった。蒼井の姿が見えなくなるのを確認し、会議室の前に立ってカーテンで遮られたガラス窓の隙間からそっと中を覗いた。ホワイトボードには、今し方終わったばかりの会議の内容が書かれている。
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