愛の歌、あるいは僕だけの星
「……美味しい」
「だろ。蒼井って、紅茶にはうるさいらしくってさ。ここで飲むやつは大抵あいつの私物なんだよな」
「え、そうなの?勝手に飲んじゃって怒られないかな……」
「まー、大丈夫だろ。仕事の合間にどうしても喉が乾いてって言っとけば納得するから」
アイスティーは、蒼井が手間暇かけてつくったせいか、なんとも綺麗な亜麻色だ。口をつければ、やはりペットボトルのアイスティーとは香りも味も全然違うんだなとひそかに感心する。
「ふふ、ありがとう」
「なあ、それ……、誰にやられたの?」
「……転んだ」
「どんだけ派手に転べばそうなるんだよ。腹、蹴られたんじゃねえの?庇いながら歩くくらい、痛むんだろ」
はあ、と溜息をついた銀也に三原がびくりと肩を揺らす。
「保健室行けよ。最初から、来るところ間違ってんだよ。俺が、三原さんにしてやれることなんて何もないよ」
突き放すように言った銀也を、三原が真っ直ぐに見つめる。そして、ゆっくりと微笑んだ。予想外である彼女の反応に、銀也は小さく目を見開いた。