愛の歌、あるいは僕だけの星
亜矢子は、レンゲの問いに答える気はないようで、無言のまま一睨みしそのまま俯いて走り去ってしまった。
「なんなの……、一体」
彼女が走ってきた方向に視線を向ける。この先にあるのは、生徒会室だけだ。
「まさか、藤原?」
亜矢子が、転校そうそう藤原銀也のことを随分気にしていたのは知っていたからついそんな言葉が口を出る。とはいえ、例え藤原と何かあったのだとしても、泥だらけというのはおかしな話だ。嫌な予感がして、散らばった資料をかき集め、小走りで彼の元へと向かった。
とんとん、と二回ノックする。
しんと静まりかえったまま、返事はない。
「藤原……?」
そっと扉を開ける。
そこには、西日で染められた生徒会室でぼんやりと佇む、藤原がいた。物音に、視線だけをレンゲに向ける。