愛の歌、あるいは僕だけの星
「とぼけないで」
「とぼけてないし」
埒があかない。大体にして、この男が自分に何かを打ち明けることなんて、絶対にないのだ。だったら、例え嫌がられようとこちらから踏み込んでいくしかない。
「亜矢子、どうしてあんなにぼろぼろだったの?誰にやられたか知ってる?ていうか、まさか藤原が……」
そう切り出してやれば、藤原は案の定うざったそうに眉間にしわを寄せた。
「なわけないだろ、バカじゃないの?おまえ」
さすがにカチンときたのか、先ほどまで浮かべていた笑みが消える。
「じゃあ、なんで……?」
「あのさあ」
藤原は、余裕そうに見えていたけれど、案外そうでもないようだ。厄介ごとをかわす能力に人並み以上に長けているくせに、今はそれをしようとしない。苛立ちを、そのまま目の前にいるレンゲにぶつけた。