愛の歌、あるいは僕だけの星
「それがわかってて、俺がやった?根拠のないことで巻き込むなよ」
視線を、藤原から離すことが出来ない。
情けないことに、身体が竦んでしまっていた。
それまで、感情をここまで表に出すことをしなかった藤原。けれどここ最近、それまで沈めていたその片鱗が見え隠れしていた。私やクラスメイト達も薄々感じてはいたけれど、それ以上に当の本人が一番感じていることなのだろう。
制御出来ないそれに、藤原自身が戸惑っているようにしか、レンゲには思えなかった。彼をそうまでするきっかけとは、一体何なのだろう。
「ごめんなさい……、考えなしなことを言って」
「……別に。俺こそ、ごめん。ちょっと苛ついてて」
藤原は、こともなげに言った。ぴりぴりと張りつめていた空気が、少しだけ和らいだ。ようやく、まともに息が出来る。ふと、机の上を見ればそこにはネクタイが無造作に置かれていた。