愛の歌、あるいは僕だけの星
そうして藤原と別れた後、深いため息をつきながら校舎を出た。
鞄の中からスマホを取り出して、"三原亜矢子"の電話番号を見つめる。大きく深呼吸して、勢いよく番号の表示を押す。呼び出し音が、やたらと長く感じる。
『……はい』
「あ、亜矢子……?」
『なあに、レンゲちゃん』
明らかにいつもより低い声音。なんと言っていいのか、瞬時に思いつかず、つい口ごもってしまう。
「えっと……、その、用事っていうわけじゃないんだけど」
『……うん』
「亜矢子、今どこにいるの?もう、家着いてる?」
そう訊ねる。しばらくの沈黙が続いた後、亜矢子がぽつりと言った。
『誠東公園』
「わかった、そこにいて」
すぐに通話を切る。誠東公園はここから近い。スマホを握りしめて、駆け足で向かった。