愛の歌、あるいは僕だけの星

 部活帰りの生徒たちを追い抜かしながらたどりついた公園で、すぐに亜矢子の姿を見つけることが出来た。小さな青いベンチに、ひとりでぽつんと座っている。日頃の運動不足で、息をきらしながらゆっくりと近づく。

「何しにきたの、レンゲちゃん」

 いつもの彼女でないことは、一目瞭然だった。

「亜矢子こそ、こんなところで何してるのよ」

「……関係ないでしょ」

 いつもの、ふわふわとしている雰囲気は少しも感じられない。手負いの猫のように、少しでも手を出せば引っかかれそうだ。
 何も言わずに、亜矢子の隣に腰掛ける。

「藤原に頼まれたの」

 そう言えば、亜矢子はぱっとレンゲを見た。廊下でぶつかったときと同じ姿。こうして間近でみると余計に痛々しく感じる。そっと、自分が着ていたキャラメル色のカーディガンを亜矢子の肩に掛けた。

 ありがと、そう亜矢子は呟いてカーディガンをぎゅっと握りしめる。
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