愛の歌、あるいは僕だけの星

「なんか、ちょっと疲れちゃった」

 亜矢子が、自嘲気味に笑った。色々と、考えすぎるくらいに考えるのは、しんどいなあと、まるで独り言のように亜矢子は呟いた。

「……レンゲちゃん、私ね。本当は……、転校する前に一度だけ、誠東学園に来たことがあるんだ。友達が、銀也君を見たいっていって、文化祭のチケットを持ってたの」

 遠くを見つめながら、亜矢子がぽつりぽつりと口にする。

「その時ね、たまたま、女の子を振ってる場面を目撃しちゃたんだけど、その瞳がすごく印象的だった。見た瞬間、すごく欲しくなったの。そんな風に強く望んだのは、生まれて初めて」

 きっぱりと、そう言った。

「前にもいったけど、すごく似ているって思った。私と銀也君は、同類で、こうして同じ学校に通うことになったのは運命だって」

 亜矢子の丸まった背をそっと撫でながら、何も言わずにただそっと見つめる。亜矢子は、俯いて小さく唇を震わせた。

「……でも、違った。ぜんぜん、同じなんかじゃ、なかった。銀也君に、裏切られた」

「藤原が、亜矢子を?」

「私が欲しかった銀也君は、いなくなってた。やっと、お互いを理解しあえる相手に出会えたって思ってたのに」
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